昭和の東宝が製作した怪獣映画をはじめとした特撮映画は、大掛かりなミニチュアセットを舞台に、感動の大パノラマで見せるのが売りでした。
その中で、建物や風景をミニチュアで表現される特撮映画の感動とはべつに、人や動物を作り物で表現するというシーンになんども東宝特撮ではチャレンジしています。
ゴジラの逆襲のクライマックスにペンギンのおもちゃ?
ゴジラ映画の第二作目『ゴジラの逆襲』。
怪獣の「野生」を表現した特撮シーンは素晴らしいです。
終盤の神子島に上陸したゴジラ、上空から見える、谷間にいるゴジラ、
あれは実はペンギンのオモチャをゴジラの外見に作り変えたものです。
大俯瞰でのカットがどうしても欲しかったのでしょう。
実際、いいカットです。
でも、これはモノクロの映画だったから使えたカットだったのかもしれませんね。
ほんの、数秒のカット(実際2カットだけ)のために大俯瞰をとるためのセットをつくるなんてことはできませんよね。いくらゴジラ映画だとしても。
そう考えると『キングコング対ゴジラ』の北極海での氷山からゴジラが出てくるシーンは凄いですよね、巨大なセットを作って、実際は11秒くらいしか使われていない。(序盤に少し出てきますが、同じ氷山のセットか不明)
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ゴジラが北極海の氷山から現れたワケ
地球防衛軍の戦車から飛び降りる人
『地球防衛軍』を見たことのある人なら、誰でも印象に残っているシーンでしょう!
ミステリアンの光線に攻撃された防衛軍の戦車(自衛隊?)の中から、人が
「あうぅ!」
と、叫びながら飛び出てくるあのシーンです。
やったぜ!東宝特撮!って感じです!
戦車の大きさと隊員の大きさが合っていない?
人形が大きく見える。
しか、人形が飛び出すタイミングが絶妙なのです。
そして、声の当て方が秀逸です!
「あううぅっ!」
(薄い記憶で書いてます。)
ヘリから吊られている多胡宣伝部長
『キングコング対ゴジラ』の劇中、日本へ運ばれる途中の海上の輸送船に、ヘリコプターから吊られながら降りてくる多胡宣伝部長(有島一郎)。
あれは、人形ですよね?
肘や膝の曲がり方からすると人形のはずです。
船に降りた実際の多胡さんと服の色が違って見えるので、吊られているのは人形だと思います。
吊られる多胡部長のフィギュアを作ったら買う人がいるんじゃないでしょうか?
どうですか、造形作家のみなさん。
キングコングに握られた文子の肘
丸ノ内線の電車で、運悪くキングコングに捕まった文子ですが、国会議事堂付近でもまだコングに握られたままです。
「妹が、、手に握られてるんですよ!」
というシーンでコングが握っているのは、例のごとく、お人形さんです。
やってくれます東宝特撮。
コングの手に握られた文子の人形の肘がヒクヒクと動いているのです。
どんな仕組みになっていたのでしょう?
電池で動かした?それともテグスで引っ張っていたのでしょうか?
この文子の人形、縮尺が会っていない。
仕方ないか。
丸ノ内線の電車をつかんでいたコングの手から見ると、文子の身長は2メートル以上ありそうだ。
モスラの頭に小美人が見えた?
『モスラ対ゴジラ』の劇中、モスラが最初に現れたシーン、飛び去るモスラの頭に小美人二人が乗っているのが見えましたよね。自分の思い込みでしょうか?
小美人は身長30cmもないと思いますが、飛んでいくモスラの頭に確かに乗っているのが見えたはず。
見えるか?見えるかも。
でも、乗ってられないでしょ!モスラの毛の中に、潜り込んだら落とされずに飛べるかもしれませんね。
馬もイノシシも作り物で表現する心意気
『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』では、作り物で楽しいチャレンジをしています。
バラゴンの食性を表すための表現として、バラゴンが馬を襲おうとしているシーンがあります。
合成で表現するとしたら、実際の馬を脅かして暴れるところを撮影しなければなりません。それもまた難しい撮影だと思います。全体のトーンを合わせるのも難しい。
円谷特撮は、作り物のお馬さんで、表現しました。夜のシーンですし、馬小屋は真っ暗にして上手く表現しています。(考えてみれば夜のシーンにしては明るい)
フランケンシュタインの作った落とし穴のシーン
フランケンシュタインがイノシシを捕まえるために作った落とし穴に戦車が落ちるシーンでは、
- 合成で手前に本物の人間(自衛隊委員)、
- 戦車に乗っていて上半身を出している隊員は人形、この人形も微妙に動かしています。
この戦車に乗っている人形の隊員が、合成された俳優の隊員に向かって、敬礼しているように見えます。そこまで考えて撮っていたのでしょうか?だったら凄いですよね。
そして、前後に挟まれた、走るイノシシの作り物!
イノシシの足元が草で隠れているので、逃げていくイノシシの動きが本当に走っているように見えます。
馬もイノシシも作り物であることは否めませんが、特撮ファンとしては、本物の馬とイノシシで撮影するより、こちらのほうが感動してしまうという心の歪みがあります。
これでいいんですよね。
人形を小さく動かすのが円谷特撮こだわりのようです
『フランケンシュタイン対地底怪獣』の終盤、フランケンシュタインとバラゴンがついに対決する!
その激闘に巻き込まれ、岩場に倒れてうずくまる高島忠夫扮する川地堅一郎は人形です。
この人形が、またヒクヒクと動いています。
生きているようです(大げさか!)
糸で動かしているようには見えません。モーターでしょうか?リモコンがこの当時あったのでしょうか?
そこを調べろって話ですが…。
人形を使うときは、少しでも手足を動かすのが、円谷特撮のこだわりなんですね。
ほかにも、P1号から降りてくるグレンとか、ガイラの手から落ちるアケミなど、人形シーンは結構あります。
探して見るとまだまだあるでしょう。